この度、第3回日本小児禁煙研究会学術集会のお世話をさせていただくことになりましたので、ご挨拶申し上げます。
子はまさに宝であります。宝である子どもたちのために私たちが残すことができる最大の財産は、子どもたちがしっかりと守られ、健康に育つことのできる社会に他なりません。喫煙は予防しうる最大の疾病であり、この旧弊を一日も早く改めるのはまさに子どもたちを守ることであります。2009年に井埜先生が立ち上げられました本研究会は、子どもたちをタバコから守るために日本中の叡智を集める研究会であり、第1回の井埜先生、第2回の加治先生に引き続きまして第3回をお世話させていただくことは身に過ぎた光栄であります。皆様のご支援とご指導をお願い申し上げます。
第3回のテーマを、「赤ちゃんから始まる禁煙活動〜まされる寳(たから)子にしかめやも」とさせていただきました。前半の「赤ちゃんから始まる禁煙活動」の語は、前沖縄県立南部こども病院院長の安次嶺馨先生が未熟児・新生児医療に長年取り組む中で禁煙普及の重要性を強く感じて提唱されたものですが、この想いはすべての医療者に共通であろうと思います。
そして後半は、今から1300年前につくられた万葉集の歌から引用しました。
『 銀(しろがね)も 金(くがね)も玉も 何せむに
まされる宝 子にしかめやも 』
山上憶良 万葉集巻五−八〇二
この歌を読むだれしもが子を思う切々たる親心に打たれます。被災地では今もなお多くの子どもたちが不自由な暮らしを強いられています。被災地と日本の復興にむけて私たちができることの一つが子どもたちが守られる社会をつくることであり、子どもたちがタバコの害を受けることのない社会の構築にむけて本研究会への多くの皆様のご参集をお待ち申し上げています。
2012年5月